奉納 第二十六回「八ヶ岳薪能」

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 奉納 第二十六回「八ヶ岳薪能」

投稿日:2016年06月27日 09:00

■能 吉野天人 よしのてんにん 角幸二郎

花の吉野山。訪れた都人たちの前に里の女が現れ、共に桜を楽しみ、花に魅かれた天人と告げて消え失せる前段。「その古(いにしえ)の五節の舞。小忌(おみ)の衣の羽袖を返し。月の夜遊を見せ申さん」。

吉野山の来歴と天人の影向(ようごう)を予告する狂言方は、里人または山神。後シテの天人は、冠を戴いた装いも華やかに、天皇の治まる聖代を寿ぎ、桜を賛美して美しい舞を見せ、「また咲く花の雲に乗りて行方も知らずぞ。なりにける」。

観世信光は「船弁慶」「紅葉狩」などダイナミックな能の作者だが、世阿弥の幽玄の主張とはまた異なって、小品ながら華やかにひたすら美しい。観世流のみ伝承する曲目。シテの角(すみ)幸二郎は宗家門下の逸材。世阿弥の言う「時分の花」に期待したい。

■狂言 呼声 よびこえ 山本東次郎

「太郎冠者殿、内にござるか。内にござらばお目にかかろ」「太郎冠者殿、留守でござる。」無断欠勤を咎(とが)めにきた主人と供の次郎冠者。留守を預かる者と声色で居留守を使う太郎冠者。その呼び声も平家節から、小歌節、踊り節へと、当時流行のメロディとリズムにエスカレートしていくノリの高まり。

三人がだんだん楽しくなっていくのも狂言の世界である。山本東次郎(人間国宝)とその弟・山本則俊、後継者の山本則秀と、息の合った舞台が展開する。一時上演が中絶し、明治になって復活した曲目という。

■能 葵上 あおいのうえ 観世清和

能は貴婦人の心の奥にも潜む鬼を造形して見せる。光源氏を巡る恋の確執のテーマ、詞章と作曲の妙、凝縮した演出。「葵上」は海外公演に必ず選ばれる人気曲。六条御息所(みやすどころ)は元皇太子妃。身分も美貌も教養も、比類のないトップ・レディである。夫に先立たれ、十歳近く若い光源氏との間に恋が生まれる。

しかし正妻・葵上の懐妊、遠ざかる光源氏の愛、その嫉妬の想いに加えて、賀茂の祭りで葵上の下人から受けた車争いの屈辱。それらは六条の心に鬱屈し、眠って理性のコントロールが弱まると、魂は生き霊となって抜けだし、葵上に取り憑いて苦しめる。

巫女(みこ)の呪文に曳かれて、六条の生き霊が現れ、綿々と悲しみと怨みを訴えるが、その激情はついに爆発し、病床の葵上を打ち据え、冥(くら)い世界に連れ去ろうとする前段。比叡山から招かれた行者の法力と、般若の鬼となって抗争する後段。古作に世阿弥が手を入れた能。空(くう)之祈は、緋の長袴が執心の尾のようにひるがえる、すぐれた替えの演出である。

円熟の境にある観世宗家の品格と技は、現代の能の頂点を見せる。ワキの森常好、狂言の山本東次郎一家、囃子の一噌隆之、観世新九郎、亀井広忠、観世元伯、それに観世宗家一門の精鋭と、今年も贅を尽くした八ヶ岳薪能である。
能楽評論家 増田正造氏

◆奉納 第二十六回「八ヶ岳薪能」
神事 清祓の儀 宮司 坂田安儀
解説 能楽評論家   増田正造
能  吉野天人    角幸二郎
狂言 呼声      山本東次郎
神事 篝火点火の儀  神職
能  葵上      観世清和

開催日:平成28年8月3日(水曜日)開場15:30
開演16:30-19:45頃終演予定

会 場:身曾岐神社 能楽殿
山梨県北杜市小淵沢町上笹尾3401
0551-36-3000
JR中央線→小淵沢駅下車(タクシー5分)
中央自動車道→小淵沢I.C.より車で5分

協賛金:一万円(全席指定)

申込先:八ヶ岳薪能実行委員会 03-3568-3229
http://www.misogi.jp/shinji/yatsugadake/
     

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