ネムリユスリカ
投稿日:2015年06月19日 09:00
ほとんどの生物が死んでしまう環境でも生き続ける生物がいます。アフリ
カにすむ昆虫のネムリユスリカの幼虫です。ユスリカの成虫は蚊によく似た
大きさや姿をしていますが、刺すことはありません。また、蚊のような鱗粉
も持たないため、蚊と見誤って叩いても、黒っぽい粉のようなものが肌に付
くことはありません。幼虫は蚊の幼虫である本来のボウフラとは形状が大幅
に異なりますが、その体色からアカムシまたはアカボウフラと呼ばれていま
す。
ネムリユスリカはアフリカのナイジェリアなどの半乾燥地帯に住み、幼虫
は岩場のわずかな水たまりで暮らします。雨期の2-3週間でさなぎになりま
すが、乾期になって水が干上がると、干からびて眠りに入ります。クリプト
ビオシスとか乾燥無代謝休眠(乾眠)と呼ばれる状態で、生命活動に必要な
代謝をしなくなります。 幼虫はこの状態で、次の雨を待ち続けます。17年
以上たってから水を与えて蘇生した例もあります。
普通の生物は体が干からびると生きられませんが、ネムリユスリカの幼虫
は、生息する土中の乾燥に耐える遺伝子を持った細菌を食べ、その遺伝子を
取り込んだと考えられています。その遺伝子が体内でトレハロースという糖
を大量につくり、細胞膜を覆って固まり生命を維持しています。
乾眠状態では、細胞を傷つける氷の結晶ができなくなりますので、極低温
のマイナス270度で77時間は生きられます。人間やマウスなどの哺乳類の半
数が死に至る放射線の半致死線量は4-5グレイで、大腸菌は人の10倍くらい
の50グレイ程度ですが、1万グレイの強力な放射線に耐えることができます。
これは、放射線を浴びても水がないので、遺伝子などを傷つける活性酸素
が抑えられるからです。また、エタノールに1週間浸しても死ぬことはなく、
宇宙空間に放置しても2年半程度は生き延びることができます。不思議なこ
とに、成虫やさなぎ、卵にはこういった能力はなく、干からびると死んでし
まいます。乾燥や極低温、放射線に対して強い生物には、クマムシやヒルガ
タワムシ、線虫などもいますが、ネムリユスリカとは必ずしも同じ仕組みで
はないようです。
こうした不死身性の解明が遺伝子を調べる研究で進められています。驚異
的な能力の秘密がわかれば、臓器や細胞、ワクチンなどの保存に生かすこと
が可能になります。今のように冷蔵庫や凍結で保存する方法から細胞を乾燥
保存し、必要なときに水で戻して使うことができれば、コスト削減に繋がる
と期待されています。電力事情が厳しい途上国にとっても恩恵となりそうで
す。
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