福島原発事故「吉田調書」
投稿日:2014年05月27日 09:00
朝日新聞は、東日本大震災発生時の東京電力福島第一原子力発電所所長:
吉田昌郎氏が政府事故調の調べに対して答えた「聴取結果書」を入手しまし
た。レベル7の大災害を起こした福島第一原発の最高責任者であり、事故収
束作業の指揮官であった吉田氏の唯一無二の公式な調書です。
吉田氏は事故について報道機関にほとんど語らないまま2013年7月に死去
しました。調書も非公開とされ、政府内にひっそり埋もれていました。吉田
調書は全7編で構成されていて総文字数はおよそ50万字、A4判で四百数十
ページに上る分量になります。吉田氏への聴き取りは13回中11回が福島第一
原発から南へ20km離れたサッカー施設 J-VILLAGE JFAアカデミーのミーティ
ングルームで、残る2回が吉田氏の仕事場である福島第一原発免震重要棟で
おこなわれました。
政府事故調は772人から計1479時間にわたって聴き取りをおこない、吉田
調書はその一環で作成されました。対象1人当たりの平均聴取時間は2時間
弱ですが、吉田氏への聴取時間は28時間あまりで、あの瞬間、どう行動し、
何を考えていたかまで聴き取りました。畑村洋太郎:政府事故調委員長は、
ほかに吉田氏の公式の調書がないことから「貴重な歴史的資料」と呼んでい
ます。
吉田調書の特徴は「吉田氏の言いっぱなしになっていない」点にあります。
政府事故調は聴き取りを始めるにあたり、「後々の人たちがこの経験を生か
すことができるような、そういう知識をつくりたいと思って、それを目標に
してやろうとしています」「責任追及とか、そういうことは目的にしていま
せん」と趣旨説明をしましたが、聴取は決して生ぬるいものではありません
でした。それは吉田氏への聴取が政府事故調事務局に出向した検事主導でお
こなわれたからで、調書は微妙な言い回しも細かく書き起こされています。
一方、吉田氏のほうも、聴き取りに真剣に応じている様子が調書の文面か
らうかがえます。調書には、吉田氏が「ここだけは一番思い出したくない」
と苦しい胸の内を明かすように話す場面があります。震災当時の社長の清水
正孝氏を「あの人」と呼んだり、菅直人氏や原子力安全委員長の班目春樹氏
を「おっさん」呼ばわりしたりして、怒りをぶちまけながら話をする場面も
あります。
全編を通して感情を包み隠さず答えていることから、全体として本音で語
っていると感じられます。吉田氏は、事実と心情や思いとは分けて話そうと
努め、また、事故発生時の認識と、その後に得た情報を加味した自身の考え
は分けて話すよう努める様子もうかがえます。
朝日新聞デジタル「吉田調書」
http://www.asahi.com/special/yoshida_report/
https://www.lifestyle.co.jp/2014/05/post_711.html
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