ナトリウムイオン電池
投稿日:2013年06月27日 09:30
現在、蓄電池の一種として広く用いられているのがリチウムイオン電池で
す。携帯電話やデジタルカメラ、モバイルパソコンの小型電源から、電気自
動車に利用される大型電源まで幅広く利用されています。全世界におけるリ
チウムイオン電池の生産量は年に30億個にも上りますが、今後はさらに、電
気自動車などの普及を受けてその需要は拡大の一途をたどると考えられます。
ただ、リチウムイオン電池はその主材となるリチウム資源が問題になりま
す。リチウムは地球の地殻にわずか20ppm(0.002%)しか存在しないレアメ
タルで、日本はその全量を南米のチリなどからの輸入に頼っています。また
産出国がチリやボリビアなどに限られることから、政情などに価格が左右さ
れ、予期せぬ危機が起きた場合、途端に供給リスクが高まってしまいます。
一方、東日本大震災以降、電気自動車や余剰電力を蓄えて有効活用するス
マートグリッドシステムなどの技術開発が進められていますが、余剰電力や
自然エネルギーを蓄えられる1000 kWh級の超大型の蓄電池にリチウムを用い
ることは、コスト的にも資源的にも、非常に難しい状況になっています。そ
ういった背景の中、リチウムイオン電池の性能を大幅に上回る次世代蓄電池
として、ナトリウムを使う「ナトリウムイオン電池」が有力候補として注目
されています。
ナトリウムを電子のやり取りに使うナトリウムイオン電池は、長所として
レアメタルのリチウムを使わずに済み、原材料のナトリウムは海水にふんだ
んに存在することから原料が安く、低コスト化しやすい点にあります。大容
量化が難しいとされてきましたが、性能面でも高い可能性を秘めていること
から研究が進められてきました。
トヨタは新しい正極材料を開発したことで電池容量を大幅に高められると、
データを公表しました。現在のリチウムイオン電池だと、技術が進展しても
走行距離は300キロが限界とされていますが、電気自動車にナトリウムイオ
ン電池を搭載した場合、1回の充電で走行距離をハイブリッド車並みの500
から1000キロメートルにできる可能性があるとのことです。
レアメタルフリーの蓄電池の実現は、今後のエネルギー政策をも左右する
ため大きく期待されていて、世界の電気エネルギーの安定供給に決定的変革
をもたらすインパクトをもっています。次世代蓄電池を巡っては、電気自動
車の搭載に耐えうるような安全性や、耐久性、電池容量の大きさ、低コスト
など、様々なハードルがありますが、各社は電解質が固体で出来ている「全
固体電池」や、充放電に空気を利用する「空気電池」も含め、メーカーや研
究施設が開発にしのぎを削っています。
https://www.lifestyle.co.jp/2013/06/post_651.html
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