ヘリウム不足
投稿日:2013年04月05日 09:00
風船の中の気体として使われていることで知られているヘリウムが世界的
に不足しています。ヘリウム(He)は元素記号表の番号1の水素(H)に次
いで2番目にありますので良く知っている元素でもあります。
太陽の中心部では核融合反応が起こっていて、水素原子4個が融合してヘ
リウム原子1個が作られると教わりました。ヘリウム原子1個の質量は、水
素原子4個分の質量より0.7%ほど軽く、この失われた質量がエネルギーに
変換されて太陽の輝きの素になっています。
語源はギリシア語のhelios(太陽)で、無色、無臭、無味、無毒で最も軽
い希ガス元素として知られています。ヘリウムは不活性な単原子ガスで標準
状態では気体として存在しています。また、絶対零度の条件でも通常の圧力
では液体のままで、固化するには非常に強い圧力を掛けなければならない物
質です。
ヘリウムは地球上に殆ど存在しない元素なのですが、1903年にアメリカで
石油掘削のボーリングを行なった時に、不燃性のヘリウムガスが出てきて、
「天然ガスの副産物」として産出し、アメリカがヘリウムの供給拠点となり
ました。2010年に1億6800万立方?が生産されていますが、その7割は米国
の天然ガス田からで、アルジェリア、カタール、ポーランド、ロシア、オー
ストラリアの6カ国からしか取れません。日本は輸入量約1300万立方?の9
割強を米国から輸入しています。
アメリカがコスト面の問題からヘリウムの備蓄量増産をやめた上に、生産
設備のトラブルから減産が起きたために近年の供給拠点はロシアやカナダ、
アルジェリア、ポーランドなどに分散しています。中国のMRI向けや半導体
向けなど、アジアでの需要は受給を上回る勢いで増えているために不足が顕
在化しています。
ヘリウムは空気よりも軽くて燃えない不燃性ガスとしての特徴があります
ので、広告用・天体観測用・軍事偵察用などの気球の「浮揚用ガス」として
盛んに使われていましたが、現在は沸点・融点が極端に低いことを活用して、
絶対零度に近い環境や超流動状態の研究では科学実験用の冷媒として、画像
診断を実施するNMR、MRIの測定装置では超伝導電磁石の冷却目的の医療用と
して、またロケットの噴射口を守る冷却剤、原子力発電における原子炉の冷
却剤、シリコンやゲルマニウム結晶の保護材として使われています。
100%輸入に頼る日本は価格も上昇して、2000年に比べて2倍ほどになっ
ています。国内ガス各社も調達先の多様化など対応を迫られていますから、
半導体の製造や医療機器メーカーにも波紋が広がっています。
https://www.lifestyle.co.jp/2013/04/post_635.html
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