「アレルギーと住環境」1
投稿日:2013年02月21日 09:00
住宅を建てる時に自然の材料を使って、人体に悪影響の無い健康住宅を造
りたい、買いたいというのは誰もが願うテーマです。その中でまだ気づかれ
ていない大切な問題が、その素材の生い立ちです。ムクの木材が良いとは誰
でも考えますが、私たち林業に携わる者からすると、あんなに防虫剤や化学
肥料、除草剤を吸い込んだ木が本当に体に良いのだろうかと考えてしまうの
です。
今から18年前、中国の四方何もない土地で、最も早く成長する桐の木を無
農薬、無化学肥料で植林し、今この素材を住宅の内装に使っています。今か
ら10年前、国の外郭団体の公式データで、やはり先進国日本の木は天然のジ
ャングルの約10倍ほどの化学物質が木の中に蓄積されていることを知りまし
た。無農薬、無化学肥料で育てる住宅素材の重要性が徐々に健康を増進させ
たい人々の間でその認識が高まってきました。
住宅一棟に使われる建築材や壁紙などに使われる接着剤はどのくらい使わ
れているかご存知でしょうか?
なんと、ドラム缶1本も使われているんです!そして、住宅内にある家具
や日用品、布製品からも接着剤の成分が揮発しています。その他、合板防腐
剤や塗料用溶剤、ポリスチレン重合断熱材、白あり駆除の防蟻剤、壁紙など
の可塑剤からも揮発しています。
その接着剤などの成分にアトピーや化学物質過敏症に影響を与える揮発性
有機化合物(キシレンやトルエンなど)がたくさん含まれているとしたら、
ましてや最近は高気密高断熱の住宅が増えていますから、そこに住む人たち
の健康状態はとても心配になります。
では、なぜそのような健康に影響を与えるような化学物質が多く含まれて
いるのでしょうか?
一つは住宅建材を伐採した土地の環境が考えられます。工場の煤煙や車の
排気ガスの影響を受けた樹木はVOC(揮発性有機化合物)が常温・常圧で
空気中に揮発し、空気を汚染してシックハウス症候群や化学物質過敏症など
の健康被害を引き起こします。
厚生労働省は、住宅に最も多く見つかり、健康被害を引き起こす化学物質
13種類と、その濃度指針値を定めています。そして、住宅を建てる際に、作
業が容易になるようように流動化し易く、かつ速く乾く(固まる)、そして
強度を高くするなど、その剤質の性能向上物質として使われていることが理
由に上げられます。
植林という活動を行っていますと、なぜ現代の人はコンクリートや新建材
の中で生活したがるのか考えてしまいます。それは、木だけが死を迎えてか
ら100年後、800年後も丈夫になっていくからです。コンクリートは硬くて丈
夫ですが、石は水と氷で砕けていきますから300年と持ちません。
例えば、日本の寺社仏閣の檜など300年はへっちゃらなんです。古民家は
どこも100年250年という木材がいたるところに使われています。木には家具
や建築素材という一見無機質な用途の中に、人間という動物がその生命を棲
まわせる深い理由が存在します。
桐の苗木を植林する場合、ある程度の間隔を開けて苗木を植えますので、
苗木と苗木の間の空間に植間農業として、いろいろな作物を植えます。その
中でもなかなか市場には出回っていない「食用ホウズキ」は元気の基の一つ、
イノシトールという栄養素が最も多く含有されている作物です。どうやった
ら一番長持ちするだろう、美味しさを長く保てるだろうと、いろいろな容器
で保存実験を試みました。
そのまま放置、ビニールに入れて冷蔵庫、紙箱、杉箱、アルミ缶、タッパ
ー、その中で一番長持ちして一番美味しさを保てたのが『桐の箱』だったの
です。夏の暑い時期に食用ホウズキをビニールに入れて冷蔵庫で保管しても、
一週間程度でドロドロになってしまいますが、桐の箱に入れた食用ホウズキ
はなんと一か月間冷蔵庫に入れなくても腐らず、しかもまだ美味しく食べら
れたんです。これは他の容器では実現できない結果でした。
ホウズキ一粒一粒の免疫力は同じでも、その入れ物の良し悪しでこんなに
も寿命が違ってくるのには驚きました。免疫力が高まったかどうかをデータ
で知る由もありません。しかし、この実験で示された桐による2倍以上の存
命率向上は、桐が生命の延命に貢献したことを如実に物語っていると思いま
す。ということは、私たち人間が住んでいる住宅にも同じことが起きている
ように思います。
>>>次号に続く
NPO法人「桐、ささやかな植樹祭」理事長 八木隆太
https://www.lifestyle.co.jp/2013/02/post_624.html
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