ゲノム診断
投稿日:2013年01月17日 09:00
自分の体の設計図である全遺伝情報(ゲノム)が気軽に手に入る時代にな
ってきました。DNAの解読は1953年に二重らせん構造が発見され、1977年
にDNAの配列を解読するサンガー法が開発されました。1986年には世界初
の自動DNAシーケンサーが発売され、1990年には国際的なヒトゲノム解読
プロジェクトが発足し、2003年にヒトゲノムの解読が完了しました。2009年
には日本人の標準ゲノムが解読されています。
ヒトゲノムは人間の体を形づくる全ての遺伝情報で、31億の塩基対で構成
され、成分となるDNAはアデニン、グアシン、シトシン、チミンと呼ばれ
る塩基という物質で情報が書き込まれています。
ヒトゲノムの解読が完了した2003年当時、装置や試薬、データ処理などに
費やす解読コストは4000万ドルもかかっていましたので、1000ドルは夢物語と思
われていました。研究機器を開発する米国のライフテクノロジーズが人間の
全ゲノム(ヒトゲノム)を3-4時間かけて解読するDNAシーケンサーを開
発したことにより、1000ドルで解読できるようになりました。
今までのシーケンサーは一人当たりの解読に2週間、コストも50万-250
万かかっていました。予算や時間の制約から利用は限られていて、研究が思
うように進まないという問題がありました。次世代型ではマイクロ(100万
分の1)メートルサイズの穴が1億個以上開いたチップにDNAを複製する材料を
流し込んで、穴に塩基が反応して生じる水素イオンをセンサーで読み取り、
電気信号に変えて種類を特定しますので、低価格の半導体チップが使えて、
試薬も不要になります。
膨大なDNAを同時に並行処理しますから、解析時間が大幅に短くなりま
す。解読コストが下がると、健康な人や患者の血液、組織を調べるだけで、
病気の原因を調べることが可能になり、食生活の改善やその人に合った予防
法で発症を抑える道も開けてきます。次世代センサーの登場でガンの診断や
治療の開発が飛躍的に進むと思われます。
患者の血液から、がん関連遺伝子の情報が読み取れると、最も効果のある
治療が選べるようになり、治療薬の開発などに役立ちます。また、次世代シ
ーケンサーは新型インフルエンザのような未知のウィルスを検出したり、感
染者の治療薬を開発したりするのにも期待が持たれています。
但し、個人の遺伝情報の保護対策など、遺伝子検査の監視、監督体制の確
立と適切な法制度の整備が必要になるでしょう。
https://www.lifestyle.co.jp/2013/01/post_619.html
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