拡張進むアジアの空港
投稿日:2012年07月10日 09:00
アジアの各地域は相次いで中核空港の拡張に乗り出しています。中間所得
層の利用が急増する格安航空会社(LCC)の拡大戦略に対応がせまられてい
る中、アジアでの国際ハブ空港の地位をめぐる争奪戦の様相も帯びています。
ハブ空港とは国内・国際便を含む航空路線が集まる大型空港を指します。
自転車の車輪の中心部「ハブ」に由来していて、スポークが路線に相当し、
人や貨物の往来を活発にして空港利用料や小売りで利益を上げます。米国で
は利用客数世界最大のアトランタ国際空港、欧州ではドイツのフランクフル
ト国際空港、アジアでは香港国際空港などが代表例です。
米ボーイングの推計によると、2030年までの空港需要は欧米が毎年2から4%
の伸びに留まるのに対し、アジア・太平洋地域は7%、特に東南アジアには
日米欧のような高速の鉄道・道路網がありませんので、所得向上がもたらし
た旅行需要の受け皿をLCCが担っています。
東南アジア随一のハブ空港シンガポール・チャンギ空港は2006年に完成し
た処理能力700万人のLCC専用の第4ターミナを取り壊して、2017年までに年
間処理能力1600万人の新ターミナルを建設します。昨年の利用者は460万人
と余裕はありますが、LCC台頭に伴う需要予測の変更が背景にあるのと、最
大の競合相手のマレーシア・クアラルンプール国際空港が2013年4月に現在
の3倍の処理能力4500万人となる世界最大のLCC専用ターミナルを建設し、
東南アジアLCC最大手エアアジアグループの本拠地として支援することも視
野に入れているためです。
もう一つが韓国・仁川空港で、国際空港評議会の空港利用調査では首位、
チャンギが2位です。両空港は国内便需要に頼れず、国際乗り継ぎ便に活路
を求める点で共通しています。乗り継ぎ客取り込みに混雑は御法度で、需要
を先取りした先行投資が不可欠になります。仁川でも2017年完成予定の新タ
ーミナル建設が進んでいます。これを踏まえてエアアジアでは仁川をハブと
した新会社設立も検討しています。
空港拡張競争はLCCの業務拡大を後押しして、日本市場への参入も加速さ
せています。この夏にはエアアジアとジェットスターがそれぞれ全日本空輸、
日本空港との合弁会社を通じて国内便に参入します。利用者にとっては今後
安価な空の旅の選択肢が増えそうです。LCCの勃興で日本の成田と関西空港
でも新LCCターミナルが計画されていますが、世界のハブ空港からは取り残
されているようです。
https://www.lifestyle.co.jp/2012/07/post_589.html
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