グローバル・コモンズの攻防
投稿日:2012年01月13日 09:00
人工衛星が飛び交う宇宙空間やネット情報、電子メールがやりとりされる
サイバー空間などは、国境線がなく人類の共通財産でもあることから公海な
どと共に「国際公共空間」(グローバル・コモンズ)と呼ばれています。人
工衛星の破壊やサイバー攻撃など、秩序破壊に歯止めをかけるルール策定へ
の動きなど、これらの領域をめぐり新たなせめぎあいが始まっています。
宇宙空間では、切り離されたロケットの部品や役割を終えた人工衛星など
の位置を追尾できる一定以上の大きさの人工ゴミは、2007年の中国軍の衛星
破壊実験で一度に約3000個も増え、現在は2万個以上あると言われています。
追尾できない微少なものまで含めると数十万個にも達するそうです。
宇宙空間を漂う人工物は、各国の宇宙活動の増加に伴いゴミも増加の一途
をたどっています。各国は現在、宇宙ゴミを追尾し、大きなものが自国の人
工衛星と衝突しそうな場合は、衛星のエンジン噴射で軌道を変えて衝突を避
けています。しかし、微細な宇宙ゴミが衛星を破壊した事例も多くなってい
ます。
宇宙に関する主な国際規範としては、宇宙空間や月への大量破壊兵器の配
備などを禁じるとした「宇宙条約」を始め、国連で採択された5条約などが
ありますが拘束力は弱く、中国やロシアは米国のミサイル防衛計画に歯止め
をかける条約を提案するなどしています。
サイバー空間をめぐっては我が国でも某大手電子機器メーカーがハッカー
攻撃を受け顧客情報が大量に流失したり、防衛関連企業がサイバー攻撃を受
けました。中には最新の情報が抜き取られたり、顧客の重要な情報が売買さ
れるなど被害は年々深刻になっています。
一昔前のハッカーによる腕自慢的なサイバー攻撃から、最近は進入して得
た情報を売買できる市場の存在からハッカーが急増し、アノニマスのように
ハッカーが集団となって攻撃を仕掛けてくるなど、攻撃レベルも高度化して
きました。サイバー攻撃がネット空間だけに留まらず、原発火災や管制シス
テムの混乱に伴う航空機墜落など、物理的な破壊事故を引き起こす可能性が
強まっていますので、国家や個人による秩序破壊の規制を目指す動きもあり
ます。
現代社会はネットワークにつながっていますので、常に攻撃の危険にさら
されているという危機感を持つことが必要な時代になりました。宇宙やサイ
バー空間での軍拡が加速すれば、核拡散やテロなどと並ぶ世界の不安定要素
となるのは確かですから国際協定の策定や規制の行方が注目されます。
https://www.lifestyle.co.jp/2012/01/post_556.html
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