越境大気汚染

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 越境大気汚染

投稿日:2011年10月14日 09:00

 九州や西日本を中心に大気環境が悪化しています。春先から梅雨にかけて
都市部以外でも空がかすむ現象が発生したり、夏に多いはずの光化学スモッ
グが春や冬でも頻繁に観測されています。

 日本の大気汚染対策はかなり進んでいますが、それでも10年ほど前から悪
化しています。直接の証拠はありませんが、専門家の多くは中国大陸で発生
した大気汚染物質が風に乗って運ばれてきた越境大気汚染ではないかと見て
います。

 越境大気汚染とは、欧州や北米で外交問題になった酸性雨が典型的な例で、
汚染原因物質が遠く離れた発生源から気流に乗って運ばれてくる現象です。
欧州と北米は1979年に「長距離越境大気汚染条約」を制定しました。最近は
海を越えた汚染物質が広がり、北極や山岳地帯など人がいない場所にも汚染
物質が見つかっています。

汚染物質には酸性雨の原因となる硫酸塩のほか、光化学スモッグを引き起こ
すオキシダント(オゾン)や浮遊粒子状物質(SPM)などがあります。越
境大気汚染の指標としてオキシダントとSMPが注目を集めていて、呼吸器
疾患など健康への影響が心配されます。欧州では脳梗塞や心筋梗塞を誘発す
る可能性も疑われています。

 汚染物質の発生源は中国の火力発電所や工場、ボイラー、自動車などが考
えられます。汚染物質は化石燃料を燃やすときに発生して、特に中国の石炭
は硫黄や重金属を多く含み、汚染物質を放出しやすいのです。心配されるの
は健康への影響で、微粒子はマスクを通り抜けて肺の奥に入り、ぜんそくな
ど呼吸器疾患を引き起こします。食べ物などと一緒に身体に取り込むとアレ
ルギーを引き起こすこともあります。

 上昇気流に乗って上空に舞い上がった汚染物質が西風に乗って流されてき
たり、春や秋に見られる移動性の低気圧や高気圧も汚染物質の運び手と考え
られ、低気圧や高気圧に巻き込まれてそのまま日本に移動し、重金属類は雨
と共に地上に落下します。

 汚染源と考えられる中国でも大規模な火力発電所や工場は排ガス中の硫黄
酸化物を取り除く脱硫装置の設置などの普及対策は進みましたが、中小規模
の工場では対策が間に合わず、逆に汚染物質の発生源が増えて2010年以降は
増加に転じています。

 欧州は隣接する国同士が汚染物質の排出を規制し合っていますが、アジア
では経済技術の格差が大きく、一律の規制が難しい状態です。越境大気汚染
に関心の高い韓国と協調して対策技術の普及を積極的に進める必要がありそ
うです。



https://www.lifestyle.co.jp/2011/10/post_538.html
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