トリウム
投稿日:2011年07月25日 09:00
福島第一原子力発電所の事故による影響から「トリウム」が注目されてい
ます。トリウムは、多くの原子力発電所で使用されているウランとは従兄弟
のような関係で天然の放射性元素です。ウラン燃料は核分裂を起こして燃え
るときにプルトニウムなど有害な放射性物質を生成しますが、トリウムは非
常に少ないので使用済み核燃料、核兵器の拡散予防にもつながります。
米国では、1950年-70年代にかけてトリウム溶融塩炉と呼ばれる原子炉の
技術開発を進めて、基本的な技術を確立していましたが、第二次世界大戦後
の冷戦構造、核兵器開発競争の影響など、政治的な背景から実用化には至り
ませんでした。
IEA(国際エネルギー機関)によると、世界のウラン資源は2030年には
ピークを迎え、今世紀半ばには枯渇に向かうと言われています。現在でもウ
ランの一次生産量は需要が供給を上回り、ロシアでは解体した核兵器や低品
位鉱石からの二次供給でまかなっています。
ウランの価格高騰や安定供給には不安要素があり、米国はウラン資源保有
国では世界第4位ですが、一部は輸入に頼っています。2009年には、高品質
のトリウム大鉱床が米国アイダホ州とモンタナ州で見つかりました。それま
ではオーストラリアが埋蔵量30万トンで世界第1位でしたが、米国は一気に91
万トンと世界第1位になりました。米国の全エネルギー需要をトリウム燃料サ
イクル原子炉でまかなうと数世紀分に相当します。
又、トリウムが含まれるモナズ鉱石はレアアースが多く、これまで放射性
物質であるトリウムはレアアースの副産物として厄介者扱いされてきました
が、原子力燃料として利用することができるようになれば、一石二鳥の資源
確保につながります。そして、トリウム利用にいち早く乗り出したのが中国
です。中国はこれから100基以上の原発を計画していますが、今年に入って
トリウム溶融塩原子炉の開発計画に着手したことを公式に発表しました。
トリウムはウランと同じ量で約90倍のエネルギーを生み出すことができ、
核分裂反応によってプルトニウムやその他の核兵器の製造原料を発生するこ
とがほとんどありません。又、燃料が最初から溶融しているので、燃料棒の
メルトダウンという状況にはならずに、核反応は冷却に従って減速されてい
くので、悲惨な事故を起こしにくいシステムになっています。
世界的には、脱原発へ向かいそうなので、ウランより安全で埋蔵量が多く、
よりクリーンな代替燃料のトリウムに期待が寄せられています。
https://www.lifestyle.co.jp/2011/07/post_522.html
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