クロスカップリング反応

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 クロスカップリング反応

投稿日:2010年11月29日 09:00

 そのままでは反応しない有機化合物中の炭素と炭素を触媒でつなぐ「クロ
スカップリング反応」が注目されています。1970年代に日本の研究者が中心
になって生み出した化学反応ですが、いまや化学の基礎原料や医薬品、エレ
クトロニクス材料など有望商品の開発に欠かせない存在になっています。

 炭素を含む小さな分子を繰り返しつなげる反応は、ポリエチレンなどを合
成する際の「重合反応」としてよく知られていますが、クロスカップリング
反応はこれとは異なり、分子量の大きい有機物の間で目的の炭素同士をつな
げる手法です。

 この反応は原料を混ぜるだけでは起きないので、かつては不可能と考えら
れていましたが、1972年に金属を含んだ触媒を用いて成功すると研究は一気
に進みました。マグネシウムや亜鉛、スズ等の金属に変える実験でいろいろ
なクロスカップリング反応が登場しました。

 最も産業応用が進んでいるのは、1979年に北海道大学の鈴木教授と宮浦助
手が開発した炭素にホウ素を結合させる反応で、鈴木・宮浦カップリングの
名で広く知られています。ホウ素のついた化合物は安定性が増し、水に触れ
ても分解されずに利用価値が増えました。それ以前のクロスカップリング反
応では、有機溶剤が必要でしたが水でも可能になり、反応自体も加熱や冷却
の工程の少ない穏和な条件で進められますから格段に扱いやすくなりました。

 医薬品業界では、高血圧症や糖尿病性腎症の治療薬の骨格となる部分に炭
素・炭素結合があり、鈴木・宮浦カップリングはこの治療薬の合成にも最適
な方法と言われています。そのままでは反応しない有機化合物中の炭素と炭
素を触媒を使ってつなげる反応は日本人研究者が優れた成果を上げています。

 2010年のノーベル化学賞は、根岸英一:米パデュー大特別教授(75)、鈴
木章:北海道大名誉教授(80)、リチャード・ヘック:米デラウェア大名誉
教授(79)に贈られます。3人は金属のパラジウムを触媒として、炭素同士
を効率よくつなげる画期的な合成法を編み出し、プラスチックや医薬品とい
った様々な有機化合物の製造を可能にしました。

炭素原子のすぐれた性質を利用して、機能性分子に必要な安定した骨格を作
り出しますから、新薬やプラスチックなどの革新的な物質を手にすることが
できるようになりました。最近、エレクトロニクス業界も電気を流すと発光
する材料、有機ELや有機薄膜太陽電池の材料にも応用すべく、この反応に
注目しています。



https://www.lifestyle.co.jp/2010/11/post_450.html
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