国際標準
投稿日:2010年07月07日 09:00
世界経済はよりグローバル化し、市場は世界単一化に向かっています。い
かに優れた製品を作ってもその製品が世界標準に合致しているか、あるいは
世界標準そのものでなければ市場を獲得できない時代になってきました。W
TO(世界貿易機関)の協定においても、各国の標準を国際標準に整合させ
ることを求めています。
標準化は互換性を確保し、最低限の品質を保証するといった旧来の意義か
ら、企業が事業戦略を構築する上で重要不可分な要素に変わりましたが、日
本には国際標準の戦略に乏しいとの声があります。どの国・どの地域でも使
えるように製品の規格や仕組みを共通にするのが国際標準です。最先端の技
術を持ちながら「規格外」の烙印を押され、グローバル競争の舞台に立つこ
とができなかった代表例が携帯電話だといわれています。
国際標準を巡る交渉は各国・地域の企業が少しでも自社に有利にと駆け引
きを繰り広げる闘争の場です。そんな中、ソニーはICカードの乗車券に使
う非接触通信技術「フェリカ」の規格を世界のルールにしました。
標準化への攻防は身内である国土交通省にも情報を漏らさず、米モトロー
ラなど競合相手の間隙を縫いながら、4年超の歳月を要しました。現在フェ
リカ向けの半導体は海外から引き合いが相次いでいて、標準を獲得すると競
争力は飛躍的に高まります。多くの企業は国際標準の重要性に危機感を抱い
ていて、人材や体制づくりで海外の企業に大きく出遅れています。
危機感の裏には中国の台頭もあります。中国では三流企業が物を作り、二
流企業が技術を開発、一流企業がルールを決めるという言葉を企業や政府の
人間がよく発言していて、明確な国家戦略が伺えます。
現行の第3世代より高速の第4世代の携帯電話で、中国の技術が2009年の
10月に国際規格の候補に選ばれました。中国の武器は人口13億超の巨大な消
費市場にあり、主導権を握ってきた欧米も中国の意向を無視できない状況に
あります。日本の携帯電話を反面教師にして、中国は国際標準獲得に意欲を
燃やしています。
世界初の技術を開発することは市場があってこそ成り立ちます。日本企業
には物づくりに時間をかけている余裕はなく、その技術を誰が必要としてい
るのかといった問いかけが常に必要です。研究の成否は市場にあるからです。
政府による技術立国を目指す国家戦略が見えない現況ですが、世界に売り
込む一貫した取り組みでは中国や韓国に出遅れる懸念が高まる中、標準化を
めぐる技術戦略はライバルの動きと世界市場の隅々まで見渡す視野と発想が
必要になります。企業だけでなく技術と市場をどうつなぐか、官民一体とな
った競争戦略創りが早急に必要になっています。
https://www.lifestyle.co.jp/2010/07/post_425.html
|