大規模森林売買

ライフスタイル総合研究所



 大規模森林売買

投稿日:2010年06月01日 11:16

 希少資源だけでなく最近は農地にまでグローバルな取引が進んでいます。
近年、我が国においても各地で様々な主体による山林売買が進んでいます。
5年ほど前から山に関心を示す外資の話があって、海外、特に中国からの要
望が多いようです。

 国土交通省によると、5?以上の大規模な取引件数は2000年?2002年は全
国で800件余りだったものが、近年増加を続け2006年?2008年には1200件ま
で増えています。取引面積は過去10年間で1万?から3万2000?へと急増し、
以前は三重・長野地域が多かったのですが、現在は北海道、宮崎、福島、熊
本など全国に広がっています。

 こうした外資による山林売買のの理由とはいったい何なのでしょうか。山
林地区の地価下落に伴い、これ以上の値下がりは無いと考えたキャピタルゲ
インが狙いなのか、世界の水需要が逼迫する中で水資源地を確保しようとす
る動きなのか、国際的なCO2排出権取引を先読みし、吸収源としての価格上
昇を期待した先行投資とも考えられます。

 しかし、こうした土地売買の実態を把握することは極めて難しく、国土の
7割を占める森林の6割は私有林です。その取引の基本となる地積は過半が
未確定で、売り方と買い方の合意だけで取引が進んでいます。また、保安林
以外の開発規制はほとんど無いのが我が国山林取引の実態です。

 日本では森林の買収にかかわる個人情報は公開する必要がないので、買収
を進めていることが分かりづらく、世界でも稀なほど規制が緩くて、地下水
の取水も野放し状態です。外資が地下水を大量に取水しているという疑いも
あります。

 土地・森・水といった国土資源は国の基本インフラです。無秩序な開発に
よって公益的機能が失われないように国や自治体が未然の備えを図る必要が
あります。ところがその基盤となる地積の過半が未確定である一方、明治政
府の地租改正とその後の民法で、土地の最終処分権までを含む私的土地所有
権が認められているため、土地の私的所有権が諸外国にに比べて極めて強い
というもう一つの問題もあります。

 本来、土地は公益につながるように活用するべきですが、我が国では国土
資源投資に対し、明確に規定した包括ルールすら存在してないのが現状です。
そもそも外国人や外国法人の土地所有については、地域の限定や事前許可を
とる国がアジアには多いのですが、そういった面でも全く無防備に近い状況
です。

 国内の業者の例では、鹿児島市の海運会社が木材チップを作る目的で奄美
大島の加計呂麻島で土地を取得し、森林の47%を伐採する計画がありました。
生態系が壊れ、水源が枯渇する可能性があることから住民の反対により、一
時的に中止になっていますが、乱開発が問題になっています。

 手遅れになる前に我々のかけがえのない国土資源を護るためのルール整備
が急がれます。



https://www.lifestyle.co.jp/2010/06/post_416.html
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