CO2の地下貯留

ライフスタイル総合研究所



 CO2の地下貯留

投稿日:2008年09月05日 09:00

 二酸化炭素(CO2)を地中に埋めて地球温暖化を防ごうという試みが始まっています。今までは、省エネルギーにより排出するCO2を削減する努力が中心でしたが、平行して火力発電所や製鉄所から出るCO2を分離・回収して地中に閉じこめる技術を用いて、大気中への排出量を大幅に削減する試みです。

 北九州の石炭をガス化して発電効率を高めた「石炭ガス化複合発電施設」は排ガス中のCO2を分離・回収する実験からスタートします。石炭ガスに水蒸気を加えてCO2と水素に転換し、特殊な吸収液でCO2だけ集めます。 地下へ貯留するには、回収したCO2に圧力をかけて地中深くに送り込みます。液体と気体の性質を併せ持つ「超臨海流体」という特殊な状態にして、水分を含む帯層水に染みこませます。

 もともとCO2の地下貯留技術は石油などを採取する際に回収率を高める方法として広く利用されていました。油田やガス田にCO2を注入すると石油などが回収し易くなります。2000年以降、カナダなどでは年間100万?を貯留した実績があります。これを温暖化防止に役立てるのが狙いです。

 問題は埋めたCO2が長期間にわたって地下に留まるかどうかにかかっています。実は日本も2003年7月から2005年1月にかけて、地球環境産業技術研究機構(RITE)が新潟県長岡市でCO2、1万?を深さ1100?の帯水層に閉じ込めました。RITEの調査によると、1000年後でも閉じ込めたCO2は一定の範囲に留まることが予想されています。

 CO2を地下に貯留する技術への期待は大きいものがあります。日本は2050年までに世界の温暖化ガスの排出を半減させる目標を掲げていますが、従来技術の延長では非常に難しい状況にあります。そこで、CO2の地下貯留はその革新的な技術の筆頭にあげられています。

 現在、世界全体でCO2を貯留できる量はおよそ2兆?と想定されていて、世界全体が現在排出するCO2量の約80年分に相当します。RITEの試算でも国内で1460億?のCO2が貯留できます。これは国内排出量の100年分に当たりますが、あくまでも理論値としての可能性です。政府は地下貯留により、2020年には年1億?のCO2削減を目指しています。

 ただ、実用化にはコストが課題となります。CO2の回収コストは1?当たり4200円程度、貯留までのコストを含めると倍近くかかりますから、これを半減する必要があります。

 また、地下貯留は化石燃料の大量消費を容認することにもなります。地下貯留は温暖化防止の対処療法に過ぎず、まずは徹底した省エネや太陽光、風力といった再生可能なエネルギーの活用に取り組むべきでしょう。



https://www.lifestyle.co.jp/2008/09/post_270.html
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