炭素繊維

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 炭素繊維

投稿日:2008年05月15日 09:38

 炭素繊維(Carbon Fiber)は、1950年代に欧米の研究者が航空機に使用する目的で開発に着手しました。1959年には日本の研究者が原料にアクリル繊維が適していることを発見し、これを機に日本企業がいち早く製品化に成功したことで、現在も世界全体の6割(アクリル繊維原料分、生産能力ベース)を東レや帝人、三菱レイヨンの3社で占めています。

 炭素繊維の原料は石油系材料ですが、主に使われるのは、通常はセーターなど衣料に使うアクリル繊維です。これを1000度以上の高温で熱すると炭素以外の成分がほとんど燃えてなくなり、ほぼ炭素だけの素材になります。木材に熱を加えて炭を作るのと同じ原理です。

 炭素繊維は糸状ですから、このままでは金属板などの代わりにはなりません。何本もの炭素繊維を並べて樹脂で接着し、シート状にする必要があります。このシートを型の上に重ねて、高温、高圧で固めると金属の板や棒のようになります。

炭素繊維の特徴は何よりも軽い点です。鉄のほぼ4分の1、鉄より軽いアルミと比べても3割強軽いのが特徴です。500入りペットボトルの大きさだと鉄は400近くになりますが、炭素繊維は約900と超軽量です。又、強さにおいても引っ張り強度が抜群で鉄の約10倍はあります。

 ただ、炭素繊維の価格は非常に高価なので、用途は宇宙ロケットや軍用機、使う量が少ない釣り竿やゴルフクラブのシャフト、テニスラケットといったスポーツ用品などに限られていましたが、製造技術の改良で価格が下がり、それに伴って需要や用途も増えてきました。軽さも需要拡大の後押しをしています。航空機や自動車では、軽いほど燃費効率が良くなりますので、二酸化炭素の排出量を減らすことが出来ます。

 民間旅客機ではこれまで尾翼などの一部に使われていましたが、米ボーイング社の次期主力旅客機として投入するB787では胴体や主翼にも使っています。一機あたりの量としては機体重量の半分にあたる約35になります。また、風力発電の羽根にも利用され始めています。羽根は一枚の長さが数十メートルになり、中心の軸に大きな力がかかるため、軽い炭素繊維が適しています。

 安くなったとはいえ、自動車分野では鋼板の鉄が1あたり100円前後と、アルミの500-600円に対して、まだ、数千円と高価で大量に採用する価格にはなっていませんが、次世代自動車とされる燃料電池車のタンクや発電所の蒸気タービンもステンレスなどの金属から炭素繊維に置き換わる可能性があります。

 短所は、鉄のように鋳型に流し込んだり、プレス加工や機械で削ったりする加工には向かないため、複雑な形状は作りにくい面があります。それでも長所を活かせば、鉄、アルミに次ぐ素材として利用が広がりそうです。



https://www.lifestyle.co.jp/2008/05/post_260.html
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