景観規制
投稿日:2007年08月20日 09:41
景観とは、私たちが生活する土地の街並みや、自然の景色、眺めのことを指します。それぞれの土地の歴史や文化、自然を背景にして特有の景観が生まれます。日本の都市は、諸外国の都市と比較して町並みが「醜い」とよくいわれます。これは、特に電線や立て看板、屋外広告物が景観を損ねている場合が多く、古い町並みと新しい建物の調和がとれていないことにも原因があります。
景観を巡る規制としては、これまで文化財保護法に基づく伝統的な建造物の保存地区での制度や都市計画法に基づく美観地区制度などの規制、屋外広告物に対しての規制がありますが、いずれも特定の地域や物を対象にした法律でした。
近年、都市の景観に対する国民の感心が高まり、2004年には景観に関して総合的に規制する3法案が国会に提出されました。この結果、広告の禁止や高さの制限の規制が出来るようになり、ここにきて景観計画や景観条例を定める作業を経て、相次いで景観規制をする自治体が増えています。
景観は単に美醜や好き嫌いだけで語るものではなく、地域の価値を高め、住民に利益をもたらす共有財産であり、その財産はきちんと守るべきとの考え方が定着してきました。自治体にすれば建築主に「景観に配慮を」とお願いは出来ても、禁止や強制はなかなか出来ませんでした。それが出来るようになったのが景観法です。
新築ビルの建設では、建築主と周辺住民の間で景観を巡って争う事例が全国各地で増えてきました。景観規制とはこのようなトラブルを避け、良好な景観を保つために、自治体が建物の色や高さを制限したり、屋外広告を禁止したりすることです。4月1日現在、44の自治体が景観法に基づいた景観計画を策定していて、その前段階の景観行政団体になった自治体は278と、景観に関する規制を厳しくする動きが相次いでいます。
例えば、京都では神社や寺、町屋などの歴史的な建築物と自然の景観とが合わさって京都ならではの景観が楽しめます。しかし、古い街並みに高層ビルや派手な屋外広告が出来ると周辺との調和が崩れて景観は損なわれてしまいます。「五山の送り火」の眺望を守るために、市中心部の建物の高さを最大45?から31?に引き下げる新しい規制が9月にも導入されます。
東京都では4月から新しい景観計画を施行し、新宿御苑などの歴史的庭園の周辺区域では、ビルの屋上に広告を新たに置くことが禁止されました。既存の広告も3?4年以内に撤去させられる予定です。国会議事堂や迎賓館などを正面から見たときの背後に位置する高層ビルの建築も規制されます。
そもそも何が美しい景観なのかという基準を決めるのは簡単ではありません。利害が対立するケースもあり、景観規制が認知され、スムーズになるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。
https://www.lifestyle.co.jp/2007/08/post_222.html
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