リスクマネジメント
投稿日:2007年03月02日 09:45
リスクマネジメントについて書かれた本の多くは、「企業や特定の事業にかかわるリスクを分析し、そのリスクをどのように管理・制御すればよいのか」という点について、極めて詳細な観点から論じているのが一般的です。さらに、それでもリスクを未然に防止できず、損失が現実化した場合に備え、どのような手法を講じて財務面での準備をすべきかという点への言及が多いといえます。
従って、リスクマネジメントは、第一に企業や特定の事業を行う場合に、その企業・事業の本来の目的である利潤追求を阻害し、むしろ損失に変えてしまう恐れのある不確実性(リスク)を分析、発見、評価し、どう管理・制御するのか、リスクは不確実性そのものであることから、事前に防ぐことができなかったリスクが現実化する可能性に備えて財務面でどのように対処するのかという、いわゆるテクニカルな観点で意義づけることもできます。
しかし、リスクマネジメントの根本的な問題は、企業や事業に損失が発生した場合には、その企業が消滅する恐れがあること、事業が中断し、利潤を発生することすらなく損失を発生しつづける「無駄な存在」になる可能性があることを、誰がどのように認識するのかという点にあると考えられます。
「日本の企業には、欧米型のリスクマネジャーが存在していない」というのが、様々なリスクを対象とした保険商品を販売する保険会社を始めとし、保険商品の販売仲介と保険契約者に対してリスクに関するコンサルティングを提供している保険ブローカーや代理店といった、いわゆる保険業界内部での定説になっています。
以前発生した東海村の核燃料の取扱ミスによる臨界事故は、巨大メディアの放つ電波にのって一夜のうちに世界中に報道され、リスクをビジネスとしているこれらの人々に衝撃を与え、改めて、「日本の社会でのリスク管理はどうなっているのか」という疑問を生む結果になっています。また、過酸化水素を積んだタンクローリーの爆発事故や商工ローンを巡る事件では、社長自らが陣頭指揮を取っていたことも明らかにされています。
企業活動の陣頭指揮を取る社長の本来の役割は、企業に「利潤をもたらすこと」にこそあれ、「損失を発生させる恐れを増幅し、損失発生を現実に生み出すこと」にはないはずです。これらの事故は、類稀な事件であったのかもしれません。しかし、経営としての基本的な姿勢を「リスク管理」においていなかった一例として捉えることができます。
リスクマネジメントが不在な日本で、テクニカルな観点からリスクマネジメント手法を実施することは、元来できない相談です。なぜなら、経営陣にその気のないことを、実務レベルでいくら推し進めようとしたところで、実務現場の担当者が評価される可能性がないわけですから、うまく行く訳がないのです。要するに、企業や特定の事業におけるリスクマネジメントの基本は、経営トップがリスクマネジメントの意義を十分に理解することにあります。
・リスクマネジメント協会
第7回年次大会 特別講習・研究発表会
基調講演「実践・リスクの認識とその評価」
ーあなたはリスクを把握できていますかー
2006年度 RIMS理事長 Michael Liebowitz
2007年3月10日(土)12:30? 日本教育会館
http://www.arm.gr.jp
https://www.lifestyle.co.jp/2007/03/post_188.html
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