空中権
投稿日:2006年11月06日 13:51
土地を利用する権利として地上権がありますが、上空の空間の一部を使用する権利として空中の電線のための区分地上権、地下鉄のトンネルのための区分地上権やそれに準ずる地役権があります。空中権はこの上空の一部を使用する権利を含め、容積率に余裕がある場合には、その土地の未利用容積率を他の土地へと移転できる権利のことを指します。
未利用の容積率を移転する権利は、米国ではTDR(Transferable Development Right)=移転可能な開発権として法律で認められていますが、日本では従来の総合設計制度や高度利用地区、特定街区などでも既存建築物の未利用容積率を活用する制度はありませんでした。
しかし、1999年に既存の建築物の未利用容積率を隣接地に移転できる(未利用の容積率が隣接地の容積率に上乗せができる)「連坦建築物設計制度」が施行され、2001年には特例容積率適用区域が施行されました。これによって、四方を道路で囲まれた敷地の集まり=街区を超えて、既存の建築物の未利用容積率を開発予定敷地へと移転できることが可能になりました。ただし同じ街づくり区域内に限られていて、例えば丸の内にあるビルの権利を新宿で使うことは出来ません。
この制度を活用して、オフィスの供給を増やす再開発が都内で本格的に始まっています。適用第1号はJR東京駅周辺です。丸の内駅舎の玄関口をシンボル化する計画で2011年までに戦前の駅舎の景観に低層改築する予定です。JR東京駅の敷地面積は2万6000?ありますが、容積率は900%なので延べ面積が24万?まで利用可能です。しかし、計画では景観重視のため3階と低層で約4分の1弱しか利用しません。
残りの容積率の一部を未利用容積率として移転しました。ひとつが三菱地所が東京郵便局隣に昨秋開業した「東京ビル」です。2万1600?を移転して延べ床面積を約15%上積みしました。2カ所目がJR東日本が三井不動産と共同で建設中のツインタワー「グラン東京」で7万9000?です。また、三菱地所の35階建てビル「SFプロジェクト」に1万5000?、「新丸の内ビルディング」にも全体の20%にあたる3万7000?が移転されます。
JRの転売費は1?あたり推定で60万前後と見られていて、今までの転売で約300億円を捻出したようです。JR東日本では東京駅の改築費用、約500億円を残る3万?の移転費用で賄う計画です。今後もこういった空中権の移転による再開発が都心部で広まっていきそうです。
https://www.lifestyle.co.jp/2006/11/post_59.html
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