粒子線治療
投稿日:2006年05月18日 10:47
高速の粒子でガン細胞を直接治療する、粒子線治療という最先端のガン治療が、注目されています。手術に代わって初期のガン治療として、痛みもなく副作用も少ないことから、これからの放射線治療として脚光をあびそうです。
この設備がある静岡がんセンターの陽子線治療棟には、水素原子から電子を奪ったあとに残る陽子を加速させる装置を収める大きな部屋があります。
患者の体を傷つけずに、ガンの病巣だけに陽子線をあてるために、素粒子などの研究に使われている加速器という装置を利用して、陽子を加速させて高エネルギー状態にします。
水素ガスから取り出された陽子は、まず長さ3?の線形加速器を通り、次に1周約20?の円形加速器を周回してスピードを増していきます。光速の約7割に達するまでに、円形加速器をおよそ1千200万周もさせなければなりません。
静岡がんセンターの陽子線治療棟の広さは、4階建てのビルにやっと治まるほどの巨大な装置を設置する必要から、延べ約4千800平方?もあります。それでも陽子線治療の施設としては世界最小クラスです。粒子の重さがより重い、炭素のイオンを使ってガンを治療する重粒子線治療施設で使う加速器はもっと巨大になります。千葉県の放射線総合医学研究所にある加速器は、サッカー場がまるごとすっぽり収まるほどの大きさです。
陽子線をはじめとする粒子線と、現在、一般的に放射線治療といわれて使われているエックス線やガンマ線との違いは何のでしょうか。
どんな細胞も放射線をあてると、原子から電子がはぎ取られて傷つきます。
エックス線やガンマ線だと体の表面近くでエネルギーの吸収量が最も高くなり、体の奥深くにあるガンには効きにくいのです。粒子線は止まる寸前にエネルギー量が最も大きくなるので、体の中にあるガン細胞にたどり着くまでは、エネルギー量が極めて低く、正常な細胞を傷つけることなく、ガン細胞だけを狙い撃ちできるのが特徴です。
ただ、どんなガンにも効くわけではなく、ガンの種類によって得手、不得手があります。前立腺ガンや肝臓ガン、肺ガンの他手術の難しい頭頸部のガン治療に効果があります。胃ガンや大腸ガンなど消化器系のガンには不向きなようです。
また、放医研で320億円、規模の小さな静岡でも70億円以上の莫大な費用が施設整備にかかりますので、現在、日本でこの治療が受けられるのは筑波大学、千葉県の国立がんセンター東病院、若狭湾エネルギー研究センター、兵庫県立粒子線センターの4つを加えた6施設だけです。現在は保険もきかないので患者は治療費として300万円前後を自己負担しなければなりません。小型化の研究によって、今後は3分の1程度の大きさで施設が出来ますから、粒子線治療を取り入れる医療機関が増えそうです。
https://www.lifestyle.co.jp/2006/05/post_73.html
|