量子暗号通信
投稿日:2005年12月12日 13:34
絶対に盗聴されることのない究極の暗号が登場しました。量子暗号と呼ばれるもので、極めて弱い光の粒である光子に情報を乗せて通信します。量子暗号研究の第一人者でスタンフォード大学の山本教授とNTTが共同で開発し、実用化の段階までこぎつけたようです。
量子とは物理量の最小単位をあらわします。光や電気の最小単位である光子や電子は量子にあたります。量子は粒子でありながら波としても振る舞うことができるため、常識では捉えにくい性質を備えています。その性質のひとつを応用し、暗号通信に活用したのが量子暗号通信と呼ばれるものです。
米国、国防総省の高等研究局を中心に研究が進められてきました。
量子暗号は今から21年前に米国のIBMとカナダ・モントリオール大学の研究者が発明しました。従来の暗号は手旗信号から現代の通信暗号に至るまで、通信文の文字の順番を入れ替えたり、別のもので置き換えて第三者が読めないようにする情報処理の手法でしたが、これだとどんなに巧妙な手法を開発しても、天才的なハッカーや強力なコンピュータによって解読される危険性は残っています。
これに対して量子暗号では、現代物理学がくつがえされない限り破ることは不可能とのことです。量子暗号通信は従来の光通信と同じように「0」と「1」という光の状態で情報を伝送しますが、最初に乱数表を送って送信側と受信側で光の状態をまず照合する点が異なります。状態に変化がなく、盗聴がなかったことが確認できた後に乱数表を使って通信文を暗号化して送ります。乱数表は送信者と受信者しか知らないため、通信の秘密が保たれるというものです。
技術のカギは、情報を普通の光ではなく、極めて弱い光の粒「光子」に乗せて送る点にあります。通常の光通信で使う強い光では、盗聴されても受けての手元に届く光の強さが変わらず、盗聴に気づかないのですが、光子は通常の光のように分割することができないため、盗聴されれば必ず見つかる仕組みになっています。ただ、光子のエネルギーは通常の通信の10億分の1と弱いため、通信距離が長いほど通信速度は落ちてしまいます。
今回の開発では、20kmの電送実験で毎秒500?ビットと、音声や文章をリアルタイムで電送できる早さとのことで、これまでの世界記録を10万倍も引き上げることに成功しました。実証実験をへて、2?3年後には実用化されそうですが、光子の到達距離は百数十?までで、市内通信しか対応できないところに課題が残っています。
新たな光子に情報を受け渡す「量子中継」技術が提案されていますが実現が非常に難しいようです。まずは金融機関のデータセンターを結ぶ通信や、政府機関同士のホットラインなどへの利用を見込んでいます。
https://www.lifestyle.co.jp/2005/12/post_43.html
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