「有機農業推進法」作成に向けて
投稿日:2005年12月22日 14:49
「有機農業は国の力、国の宝である」と私は固く信じている。確かに現在はまだ、国内で生産される農産物のほんのわずかしか有機栽培によって育てられていない。しかし消費者の間では食の安全を考え、できるだけ農薬や化学肥料を使わない農産物を選びたいという人が増えている。それにもかかわらず有機農業が普及しない理由の一つは、生産者が慣行農業から有機農業に転換するのはリスクが高いという意識を根強く持っているからである。近年の成功例から、日本のような高温多湿の国であっても有機農業が可能であることが証明されてきているが、残念ながら多くの農業者はその実績について十分な情報を持たないために、有機農業に切り替えることをためらっているのだ。
農林水産省の有機農業に対する姿勢もいまだに消極的である。有機農業は小規模農業で、ホビー的で、高付加価値農業であるという認識である。その認識は誤解だと私は思う。有機農業は決して困難なものでなく、身近で簡単であり、国の後押しによって普及させるべきものなのだ。
これまで有機農業の関係者が、有機農業の将来を信じてあらゆる困難に耐え、公の支援も受けることなく数十年間頑張ってきたことに私は心から敬意を表している。だからこそ今後、有機農業を日本でさらに普及させるために、国から出来る限りの支援や後押しが不可欠であると確信して、有機農業推進議員連盟(以下議連)の立ち上げとその活動に事務局長として、また一国会議員として参加させていただいているのである。
議連は超党派で、2004年11月9日に設立総会を開き正式に発足した。会長には谷津義男衆議院議員(元農林水産大臣)にご就任いただいた。衆参全議員に呼びかけたところ、設立時点で各党から63名の議員が入会したが、その後も増え続け、2005年6月24日までにその数は137名に達している(自民56、民主 64、公明9、社民2、共産3、無所属3)。
有機農業の普及には、栽培技術の研究と指導の徹底が欠かせない。有機農業をしている人の中には栽培に成功している人もいれば、自己流のやり方で試行錯誤しても十分な技術をマスターできない人もいる。しかし自治体などに所属するプロの指導によって技術を身につければ、多くの人が有機栽培をうまくこなすことになる。
私自身、湯河原の自宅にある40坪の家庭菜園で、すでに12年間有機栽培による野菜作りを続けている。有機肥料を使うことによって土の中の有用微生物を増やし、病気にかかりにくい野菜をそれほど手間をかけずに育てることに成功している。日本全国には私のような家庭菜園や市民農園で自分たちが食べる分の農産物を有機栽培している人が大勢いるだろう。あるいはJAS規格による有機認証を受けていない有機栽培農家と、直接提携で農産物を取り寄せている消費者もかなりの数に上っている。これらすべてのシステムを選択肢として法律の中に取り組むことは可能であると私は考えている。
Where there is a will, there is a way - 「意志のあるところに道がある」。このことを慣行農業から有機農業に転換するのをためらっている生産者に伝えたい。私自身もこれからも前向きな姿勢で、自分に与えられた使命の実行に仲間の議員とそして有機農業の発展を信じている国民と一緒になって取り組みたいと思っている。
参議院議員・有機農業推進議員連盟事務局長 ツルネン マルテイ
2005年7月5日『週刊農林』第1924号より抜粋
ホームページ :http://www.tsurunen.net/
https://www.lifestyle.co.jp/2005/12/post_107.html
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