新型インフルエンザ
投稿日:2005年12月15日 22:12
日本では長年、スペインインフルエンザや香港インフルエンザを「スペイン風邪」、「香港風邪」などと呼んできたため、普通の風邪と混同する人も少なくないようですが、風邪とインフルエンザとでは、病原体の種類が全く違う別の病気なのです。風邪はめったに重症にならず感染力も弱いのに比べて、インフルエンザは高熱をともない肺炎や気管支炎、脳症などの合併症を引き起こすなど症状が重くなるのが特徴です。
インフルエンザは、日本に限らず、熱帯地域を含む地球上のあらゆるところで見られるインフルエンザウィルスによる感染症です。温暖な地域では冬に流行します。日本では2004-2005年の昨シーズンは、この10年で患者数が最も多く、およそ1,800万人が感染し、約15,000人がインフルエンザに関連した病気で亡くなったと推計されています。
人に感染するインフルエンザウィルスにはA型、B型、C型があり、現在、流行の中心になっているのはA型のソ連型と香港型の2種類とB型の計3種類です。中でもA型は毎年のように少しずつ変化していて「小変異」を続けていますが、そうした小さな変化ではなく、表面構造が全く異なる新しいタイプに突然変わることがあります。
現在アジアを中心に流行している鳥インフルエンザもA型の一種ですが、性質が変わることで人から人へ感染する「新型インフルエンザ」の発生が懸念されています。A型ウィルスは、人を含む豚やクジラなどほ乳類と、カモやアヒルなど鳥類が保有しています。中でもカモは多くの種類のインフルエンザウィルスを宿していますが、お互いに長年共存関係にあるため、重い病気を引き起こしませんでした。しかし近年、鳥同士の接触やふんなどを介して抵抗力が弱いニワトリなどに感染して重い症状を引き起こしています。
本来、ウィルスは細胞と強く結合してはじめて、細胞の中にまで侵入することができるため、ウィルスの表面構造と細胞の表面構造がぴったりと合わなければ感染はしないことになります。カモのウィルスと人の細胞は相性が悪いため、通常は感染を起こしません。しかし、ニワトリや豚など家畜を通して鳥インフルエンザウィルスの表面構造が大きく変化し、人の細胞に感染しやすいヒトインフルエンザに変化するケースがあります。
これまで、人の間で流行したインフルエンザウィルスに対しては、すでにワクチンが、開発されていますが、新型に対してはワクチンがないうえ、免疫力の強弱に関係なく感染してしまうので、人への感染を繰り返すうちに大流行し、多くの犠牲者が出てしまうことが心配されています。有効な予防策は現在のところないに等しく、うがいや手洗いをこまめにしてマスクの着用や流行地への渡航を控え、人ごみ、繁華街への外出を控えるといった基本的なことしかないようです。
https://www.lifestyle.co.jp/2005/12/post_10.html
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