所得税の見直し
投稿日:2005年11月16日 13:37
所得税は首相の諮問機関である政府税制調査会の中の基本問題小委員会で検討されていますが、今年6月に発表された「個人所得税に関する論点整理」と題された報告書によりますと、国が徴収する所得税と地方自治体が徴収する個人住民税など、個人への課税を2006年度以降に抜本的に見直す内容になっています。特に会社員などサラリーマンへの控除の見直しが顕著になっています。
国の税収は1991年度の98兆円をピークに減少し続け、2003年度には78兆円まで落ち込みました。一方、国や自治体の歳出があまり減っていないため国債や地方債の借金が年々増えています。借金を返すためにさらに多額の借金をするという悪循環の結果、2005年度の国と地方の債務残高は774兆円まで膨らんでしまいました。これはGDP=国内総生産の1.5倍にあたります。高齢化の進展による社会保障の出費増や出生率の低下による人口減少での税収減が今後予想されることから、早急に見直しを進めています。
内容的には、99年度から始まった税額の一定割合を控除する定率減税の縮小から完全廃止へ、また所得控除も基礎控除38万円は残すものの配偶者控除38万円は縮小か廃止の方向へ、扶養控除や特別扶養控除も見直しといった具合です。また、団塊の世代の大量退職を控え退職金の課税も強化されそうな雰囲気です。
サラリーマンの給与所得控除は年間5?40%。平均で27.8%を経費と想定して、所得税率を計算する際に年収から差し引いています。具体的な数字はまだのようですが、こちらも見直しの方向で検討されています。給与所得者の場合、商店主や自営業者のように事業所兼自宅や車などの経費を申告して収入から差し引くことはできません。平均的なサラリーマン世帯が生計を維持するために、最低眼必要な衣食住と医療に占める割合を試算すると約25%になるそうなので、これは所得税と住民税を合わせた給与所得控除の平均とほぼ同じ数字になっています。このため是非とも廃止は避けてほしいものです。
一方で注目されているのが、消費税増税の可能性です。1997年の消費税率引き上げでは景気が急激に悪化し、税収はかえって落ち込みました。誰でも同じように負担する消費税は所得の低い層の負担が相対的に大きくなります。
小泉首相は自分の任期中はないと表明していますが、どうせ増税なら消費税の方がまし、と思わせる財務省の意図があるのではとの指摘もあります。
税の見直しは、サラリーマンに比べて自営業者や農家の所得補足率の低さが解消されていない点や財政悪化を訴えるわりには国、自治体の危機感が足りず、公務員総数や給与の削減、無駄遣いの見直しが進んでいないのが現状です。
景気への影響を抑えることと、国民の十分な支持を得る努力がまず求められそうです。
https://www.lifestyle.co.jp/2005/11/post_45.html
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