人体通信
投稿日:2005年07月16日 13:53
人間の体を電線にみたてて情報をやりとりする技術、人体通信の研究がかなり進んできています。人体通信とは言葉どおり、人の体に電気信号を流して通信する技術のことです。IBMやマサチューセッツ工科大学が、身につけて使う「ウェアラブルコンピュータ」、例えば腰に付けたコンピューターからゴーグル型のディスプレイに画像を送るといった具合の情報伝達手段として開発を始めたのがきっかけでした。
NTTマイクロシステムインテグレーション研究所では、飲むべき薬の種類や順番を患者に知らせるシステムを開発しました。患者が棚に並べられた薬の缶に触ると、もう片方の手に持ったPDAから「副作用の可能性があります」などの音が流れるとともに端末の画面には「×、この薬は服用しないでください」という文字が表示されるシステムです。
缶に収められた情報が電気信号として患者の指や腕、胴体を伝わって携帯情報端末(PDA)に伝わり表示します。文字情報だけでなくDVDの画像を送ることも可能です。
体の左手と右手の間に電圧をかけると電界が生じて体の表面が電気を帯びた状態になります。このシステムでは電圧を調整して電界で「0」「1」のデジタル信号を作り、PDAについているセンサーで情報を読みとります。電界の強さは人が送電線の下に立っているときの1/1000から1/10000程度と極めて小さいのが特徴で、この微細な信号を読み取るセンサーの開発が人体通信の研究を大きく前進させています。
人の体が電気を帯びることや、体に電流が流れることはよく知られていますが、人の体に電気信号を流して情報通信をすると聞くと、電気が流れて「ビビッ!」と来そうなイメージになりますが、電流が流れるわけではなく、テレビやパソコンのそばにいるよりも影響は少ないそうです。
松下電工では、より簡単な方法で体に微弱な電流を流して信号を送ったり、情報を読み取る方式の研究を進めていて、簡単なデータを送るには十分な方式で実用化は早そうです。
いつでもどこでもネットワークとつながるユビキタス通信が注目され始めて、無線では近くにいる人が一斉に使い始めると混信の恐れがあるので、人の体が電線の代わりになる人体通信が注目されるようになってきました。今後は握手をするだけで、相手の名刺や写真のデータが自分のPDAに収まったり、ドアのノブに触れるだけで解錠や開閉ができたりなど、触れればつながる人体通信が生活様式やビジネスを変化させる可能性があります。
ただ、人体通信の原理はまだはっきりわかっていない面も多く、人体への安全性や盗聴などのセキュリティ分野などに課題があり、普及にはもう少し時間がかかりそうです。
https://www.lifestyle.co.jp/2005/07/post_52.html
|