汚染土壌の浄化技術
投稿日:2005年05月22日 14:54
重金属や化学物質などで汚染された土地の浄化技術が、土壌浄化のニーズの増加とともに進展してきました。植物や微生物を使った「バイオ浄化」で短期処理する技術が開発される一方で、土壌の加熱処理といった従来の方法も効率が向上してきています。
最近注目されているのがバイオ浄化です。微生物や植物を使って土壌から汚染物質を除去する手法の総称です。微生物を使った浄化は「バイオメディエーション」と呼ばれ、土壌中で汚染物質を分解させます。土壌に栄養源を注入して、生息している菌を活性化させる手法と、特殊な菌を散布する方法があります。植物浄化は根から土壌中の汚染物質を吸い上げさせて、植物を刈り取ってから消却して汚染物質を回収する方法です。
東京ガスと鹿島建設が共同開発した工法は、土壌に空気を通して揮発性有機化合物を追い出す従来工法に、有機化合物を分解する細菌を活用しています。東京ガスの横浜工場跡地は約800?の汚染地で、環境基準の100倍に当たるベンゼンをこの方法により1年程度で浄化できました。浄化にかかった期間が従来の方法の約3分の1になり、コストも約3割低減できたようです。
大林組とトヨタ自動車は汚染土壌を掘り出して菌を入れて処理する手法を開発しています。揮発性のトリクロロエチレンなどの浄化に向いていて、環境基準の30倍までの汚染土壌では、通常処理に1?2週間かかるところが24時間に短縮することができます。
農業環境技術研究所や三菱化学グループが着目しているのが、植物を使って汚染された土地を浄化する手法です。コシヒカリなどのジャポニカ米と長粒種のインディカ米とを交雑種した特殊なイネはカドミウムを通常よりも多く蓄積します。広い土地でも手間がかからないので、旧鉱山周辺で汚染された農地などに活用が期待されています。
化学反応や熱を利用した従来型の処理技術も「早く確実」を売り物に技術の改良が進んでいます。東ソーとオルガノが共同出資した環境テクノが手がけた板橋区の化学工場跡地では、土壌中で金属触媒と酸化剤を混ぜて「ラジカル」と呼ぶ強力な酸化物質を発生させ、粘土層に潜り込んだトリクロロエチレンなどの揮発性有機化合物を化学分解しました。
約1万5000?のマンション用地としての転換でしたが、土を入れ替えることなく費用も土壌を入れ替える場合に比べて半分程度で済み、工期も約1年と短縮につながりました。
他の大手ゼネコンやそのグループなども工期の短縮やコストを削減した工法を開発しています。汚染土壌の浄化に参入する企業も1000社以上といわれ、市場規模は千億円程度に膨らんでいます。確実な浄化と早く、そしてコストの抑えられる技術が求められていきそうです。
https://www.lifestyle.co.jp/2005/05/post_109.html
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