電力自由化
投稿日:2004年08月18日 12:07
今年の夏は梅雨が短く、酷暑が続いています。電力需要もまさにうなぎ登りといったところでしょうか。電力の自由化は1995年の電気事業法の改正で鉄鋼メーカーなど大きな発電設備を持つ事業者が、余った電力を電力会社に売ることが可能になったところから出発しました。電力を利用者に直接販売する小売分野では、2000年から段階的に自由化が進んできて、2000年3月の自由化では、電力需要規模2千??以上大型の工場やオフィスビルが新規事業者や他地域の電力会社から電気を購入することが可能になりました。2004年の4月には同5百??以上の分野も開放されました。さらに2005年の4月には自由化の対象が同50??以上にまで広がる予定です。電力ベースで市場全体の6割以上が自由化される計算になります。そうなれば小さな町工場や商店を除く、ほとんどの工場や商業施設が電力の供給元を選べるようになります。
電力自由化を目指す動きが活発になったのは、日本の電気料金が他の先進国に比べて割高であるとの批判が高まったためでした。自由化で先行する欧米の電気料金は家庭用、産業用ともに日本の料金の半分程度にすぎません。80年代以降、電気料金が割高のままでは、企業が国際競争で不利になり、産業の空洞化を招きかねないとの懸念が強まったからです。電気料金を引き下げるには、地域独占を改め、新規事業者や他地域の電力業者の参入を認めて、競争原理を働かせる必要がありました。大規模な工場が年間に支払う電気料金は年間数億円にも達するため、数%程度の値下げでも企業の収益改善に大きく貢献できるからです。また、電力の自由化による影響は価格面だけでなく、コージェネレーション(熱電供給)や燃料電池をセットにした新たなサービスなど、利用者にとっての選択枝が増えるとともに、大手電力会社が自らの経営の効率化に力を入れるといった波及効果も期待されています。
自由化で新規事業者が利用者に電力を届けるには、大手電力会社が所有、管理する送配電網を利用するしかありません。そこで電力会社が新規事業者の利用を意図的に妨害することのないよう監視するため、中立機関の設置も計画されています。電力需要は時間帯や地域により変動するため、需要のピーク時とそうでないときに大きな差が生じるので、余った電力をお互いに融通し合う市場を作る必要もあります。
これまでのところ電力の自由化によって産業用電気料金は2000年以降7%程度低下しました。しかし、残された課題として原子力発電の位置づけを明確にする必要があります。温暖化ガスの排出抑制の観点で見れば原発は重要ですが、競争の激化によって総括原価主義が崩れ始めると、原発を抱えていることが、コスト面で大きな負担になりかねません。使用済み核燃料の処理費用など、曖昧になっているコストも表面化してきました。実際に、徹底した民営化・自由化を進めたイギリスでは、原発を運営する民間企業が経営難に陥り、政府が救済するといった事態も発生しています。政府は2007年以降に全需要の3割を占める家庭用市場も含めた全面自由化の検討を開始する計画ですが、詳細についてはまだ何も決まってない状態です。電気料金が下がっても無駄遣いには気をつけましょう。
https://www.lifestyle.co.jp/2004/08/post_93.html
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