納税者番号
投稿日:2004年07月18日 12:12
最近、納税者一人ひとりに番号を割り振る、納税者番号制度なるものの議論が進んでいるようです。納税者番号制度とは、国民一人ひとりに異なる番号を持たせて、納税者の所得や納税状況を把握するのが狙いです。番号は税務当局などが振り分けます。
この制度が実施されると、納税者は確定申告などで納税申告書を提出する際、自分の番号を書き込むことが必要になります。一方、納税者が取り引きする銀行や証券会社も取り引きした内容を記載した「情報申告書」を税務署に提出する際、納税者番号を記入します。
税務当局は、納税者から提出された納税申告書と金融機関の情報申告書を照らし合わせて、納税申告書の内容が正しいかどうかを確認し、申告漏れなどのチェックが容易になり、脱税を防止する効果も見込まれます。
海外では、欧米諸国やオーストラリア、韓国などがすでに導入しています。日本でも長年検討されてきましたが、今年4月の政府税制調査会の金融小委員会で、希望者だけを対象とする「選択制」の納税者番号制度を導入することに意見が一致しました。
これまで納税者番号を導入できなかったのは、国家が個人の所得を詳細に把握する監視社会への抵抗感が強かったことがあげられます。納税者番号の導入が個人情報流出のリスクを高めるとの指摘がなされています。実際、個人情報の流出事件も相次いでいることから、国民の納税者番号制度を見る目にも厳しさが増しています。
しかし、今のままでは手作業で膨大な報告書を照合することになり、効率化は避けられない状況です。納税、徴税業務の効率化には番号の導入とともに、金融機関や納税者からの申告を電子化する必要もあり、電子化には行政側だけで1千億円以上の投資負担も指摘されています。どうコストを賄っていくのかも課題になっています。
日本は源泉徴収が中心で、納税者が納税意識を持ちにくいとの指摘があります。本来、番号制の導入は税務当局だけでなく、納税者の利便性も高める必要があるはずです。
欧米には、各納税者の申告納税額の見積もりを税務当局が作成してくれる国があります。納税者は見積もりに従って確定申告ができますので、面倒な手続きを省くことができます。番号制度で、各納税者の所得を把握しているからこそできるサービスです。
納税者番号自体が存在することは悪いことではありませんが、利便性と安全性をどう両立させるかいう課題の克服と個人情報の漏洩に対する罰則が必要になります。また、国民の納税意識が高まるような税金の使われ方、透明性、無駄の排除といった動きや、政治家、官僚の本気に取り組む姿勢がまず必要なのではないでしょうか。
https://www.lifestyle.co.jp/2004/07/post_94.html
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