劣化ウラン弾
投稿日:2003年05月23日 10:30
天然ウラン中に僅か0.7%しか含まれていない核分裂反応するウラン235の濃度を高めた濃縮ウランを作る際に生じる、言わば絞りかすのウランが劣化ウランと言われるものです。この劣化ウランに少量のモリブデンとチタニウムを混ぜて、高温を発するマグネシウムで焼き固めると金属状に変化します。これを主に戦車の装甲を貫通させる徹甲弾の弾芯に用いたものが劣化ウラン弾です。
劣化ウランを用いた砲弾は、それまでのタングステンを素材にしたものと比べ、比重が大きいため、貫通効果が1割程向上します。しかも、命中時の摩擦熱により、1100度以上になると発火するため、焼夷効果による乗員の殺傷や砲塔内の砲弾の誘爆が期待できます。その上、タングステン製よりもはるかに安価です。湾岸戦争でイラク軍戦車の上面装甲を撃ち抜いて「活躍」した米空軍のA10対地攻撃機の30ミリ機関砲、米海軍の対艦ミサイル迎撃用の「ファランクス」20ミリ機関砲にも劣化ウラン弾が用いられていました。
先天性異常児の生まれる確率が非常に高いと言われる湾岸戦争症候群の原因として、神経ガスの予防剤と殺虫剤の混用で生じた化学反応の相乗効果も考えられていますが、それよりも劣化ウラン弾微粉塵吸引による体内被曝が考えられています。金属状のウランが燃えると、大気中のチリなどに付着して、放射能汚染がかなり広範囲に広がっていることも考えられます。
人と環境にどのような影響があるのか、はっきりしたことは言えませんが、米側の「人または環境に対する危険はなかった」との報告は鵜呑みにできません。現に米国は湾岸戦争中に味方に誤射された戦車を「放射能廃棄物」として、厳重保管していたようです。原子力発電で生じる高レベル放射性廃棄物と同様「使用された後のことを考えずに開発された兵器」といえるのではないでしょうか。(孝)
https://www.lifestyle.co.jp/2003/05/post_121.html
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