温暖化対策:新エネルギー
投稿日:2003年03月23日 10:31
風力やバイオマス(生物資源)、太陽光などの環境汚染を起こさない新エネルギーを開発・導入する動きが欧州や日本で本格化してきました。先進国に二酸化炭素など温暖化ガスの排出削減を義務づけた京都議定書が今年発効する見通しで、温暖化対策の推進は待ったなしの状況です。新エネルギーは化石燃料の消費を減らす有効策だけに、課題とされるコスト削減が普及のカギを握っています。
北欧スウェーデンの首都ストックホルムでは、バスやゴミ収集車など公共交通車両千六百台のうち半数の八百台は二酸化炭素の排出量が少ない、廃材や生ゴミから製造したバイオマス燃料で走る低公害のバイオマス自動車です。燃料に使うメタノールは主に廃材から作りますが、一部はイタリアで廃棄され、安く手に入るワインからも作っています。また、生ゴミや下水、家畜のふん尿から発生するバイオガスを燃料にする天然ガス自動車も計画されています。バイオガス生産工場の建設も進める計画で、運輸部門の二酸化炭素排出量を抑制して2010年までに現状よりも4%の削減を目指しています。
欧州が新エネルギーに力を注ぐ背景には、温暖化防止策の柱にすると同時に新たな産業を育てるという狙いもあります。昨夏の環境サミットではエネルギー供給のうち、15%を新エネルギーで賄うことを先進国に義務づける提案をEU(欧州連合)が主張しました。新エネルギー市場を創出するもくろみだったようです。
デンマークでは風力発電をCO2削減と新産業育成の切り札にしようとしています。今年から来年にかけて世界最大級の大型洋上型風力発電所が相次いで操業を始めます。
ひとつはユトランド半島の沖合に完成し、もう一つも今年中には完成の予定で、合わせて約25万世帯の家庭の電力を供給できる規模です。これで国全体としては年間総電力量の約2割を風力で賄えることになります。また、同国の発電機メーカーは3千KW級の風車も開発済みで、2030年には総電力需要の半分は風力発電の供給を予定しています。計画通りに進めば2010年ごろには1990年比で21%のCO2削減が可能になります。すでにデンマークではNEG・ミーコン社やベスタス社などのメーカーが成長して、風力産業は3千億円以上の規模で、2万人以上の雇用を生み出しています。
新エネルギーは化石燃料に比べ二酸化炭素や硫黄酸化物の排出量が少ない長所を持っていますが、普及をはかるには割高になるコストが問題です。地球温暖化や大気汚染を招く化石燃料の消費には環境税を導入するなどして、新エネルギーとの価格差を解消するとともに、新エネルギー業者間で競争させることでコストの低減をはかるような政策が必要となってきます。新エネルギー事業が新しい産業の創出と活性化、温暖化ストップへの切り札になることを期待しています。
https://www.lifestyle.co.jp/2003/03/post_122.html
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